1898年にレニンが発見されてからの歴史を荒川先生と日和田先生にご監修いただきました。どうぞご覧下さい。
監修:
福岡大学名誉教授 荒川規矩男先生
愛媛大学名誉教授 日和田邦男先生





ラジレス(一般名:アリスキレンフマル酸塩)は、血圧調節と体液・電解質のホメオスタシスの維持に重要な役 割を果たしているレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(renin angiotensin aldosterone system: RAA系)に作用する直接的レニン阻害薬(direct renin inhibitor:DRI)であり、RAA系の起点に位置する律速 酵素のレニンを直接的に阻害する、新規作用機序を有する経口降圧薬である。
RAA系に作用する薬剤としては、すでにアンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor:ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensinIIreceptor blocker:ARB) がある。いずれも適応範囲の広い第一選択の降圧薬として国内外で汎用され、近年では大規模臨床試験の結 果から臓器保護作用が証明されている。しかし、ACE阻害薬はキマーゼなどの非ACE経路由来のアンジオテ ンンシンII(AngII)産生は阻害できない。また、ARBもAngIIのアンジオテンシンIIタイプ1(angiotensin IItype1:AT1)受容体への作用はブロックするが、AngIIが増加するため、RAA系を完全には抑制できな い。さらに、ACE阻害薬やARBは腎臓からのレニンの分泌を抑制するネガティブフィードバック作用を減弱 させ、代償的に血漿レニン濃度(plasma renin concentration:PRC)及び血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)が上昇する。一方、RAA系の起点に位置するレニンを直接的に阻害するラジレスは、AngⅠ以 降のすべてのアンジオテンシンペプチドの産生を抑制し、RAA系全体を抑制することが期待できる。
直接的レニン阻害薬は、ACE阻害薬やARBが開発される以前から開発が試みられていたが、初期に開発され たペプチド性の基質アナログや非ペプチド性の有機化合物の直接的レニン阻害薬は、経口投与できない、効果 の持続時間が短いなどの多くの問題があり、開発は成功しなかった。ラジレスはこれらの問題点を克服した、 非ペプチド性で1日1回経口投与が可能となった初めての直接的レニン阻害薬である。
ラジレスは1994年に現ノバルティス ファーマ社で創製され、1999年からスピーデル社(スイス)が初期の臨
床試験を探索的に実施した。その後、2002年にノバルティス ファーマ社が臨床開発を引き継ぎ、その後の臨
床試験を実施した。国内では2004年より臨床試験を開始した。
国内及び外国で実施した臨床試験から、ラジレスは1日1回投与で速やかでかつ24時間以上にわたる持続的な
降圧効果を示し、他の降圧薬との併用でさらなる降圧効果を示した。また、プラセボと同様の安全性プロファ
イルが認められ、ラジレスの高血圧患者に対する有効性及び安全性が確認された。
ラジレスは、2007年3月に米国で降圧薬として承認され、2009年3月現在、米国、欧州各国を含む世界77ヵ国
で承認されている。日本においては、2009年7月に承認された。
さらに、ラジレスは日本を含む世界中で多くの大規模臨床試験を実施中である。